現在のアーセナルの懸念点①
経験不足とベテランの不振
もともとこのニュースレターでは新たな試みとして、アーセナル・コラムでの選手採点に加えて試合を振り返り、気になったポイントなどをピックアップする振り返り記事の配信をしようと考えていたのだが、エヴァートン戦はあまり振り返りたくない試合だったので、一旦振り返り記事は次回以降に回すとして、今回は現在のアーセナルが抱える懸念点に関して書いてみようと思う。
若手路線に舵を切ったアーセナル
もともと若手の育成はアーセナルのアイデンティティの一つといっても良い部分ではあり、ソクラティス、ムヒタリアンやダビド・ルイス、ウィリアン、セドリック、といったベテランの補強と起用が続いた時期を経て、最近再びアーセナルが若手主体のチーム作りを進める方向に舵を切ったのを好意的にとらえたファンは多かったはずだ。
だが、かつてのアーセン・ヴェンゲルのチームが証明した通り、若手が多いチームにはそれなりの欠点もある。そして、今のアーセナルはフレッシュでエキサイティングではあるものの、流石に若い選手の割合が高すぎるように思う。
アーセナル史上2番目ペースで若いチーム
アーセナルの今季の出場メンバーの平均年齢は24.2歳で、2位のセインツの25歳に大きく差をつけてプレミアリーグ1若いチームとなっている。これは昔から若手の起用が多いイメージも強いアーセナル基準で見ても史上2番目に若く、シーズンを通しての出場選手の平均年齢が今季を下回っているのは2008/09シーズンの23.7歳のみだ。
首位争いを演じているマンチェスター・シティ、チェルシー、リバプールのプレミアリーグ出場メンバーの今季の平均年齢はそれぞれ26.8歳、26.6歳、そして27.5歳で、やはりある程度ベテランやキャリアのピークを迎える20代後半の選手の力がトップレベルではある程度必要なのだろう。
今季皆良いプレイを見せているとはいえ、冨安、タヴァレス、ロコンガとプレミアリーグに今季初挑戦の選手もいるし、スミスロウですらまだトップレベルで台頭してから1年も経っていない。
ベテランの不振
もちろん彼らをサポート出来るより経験豊富な選手がいれば問題はないのだろうが、事態を深刻にしているのが本来チームを引っ張るべきベテラン勢の不振だ。
アルテタがコメントしていた通り『ベテランがチームを引っ張り、若手がそれに続くべき』のはずだが、現状のアーセナルはその真逆だ。本当に苦しい時にチームを救うのはサカでありスミスロウでありラムズデール、という状況になってしまっている。
チームのキャプテンであり最年長のオーバメヤンはもともと自身の気分にプレイが影響されやすい気質のように見受けられ、今季は深刻な決定力不足にあえいでいるし、彼の相方のラカゼットは半年後の移籍が濃厚になっており、かつ今季ここまでフル出場換算で約5試合、444分しか出場がなく、1得点とチームを引っ張れてはいない。
ペペは詳しくはまた別の記事でも触れるが、不可解ともいえる形で最近は全く出場機会が得られていない。マルティネッリどころかラカゼットと同じく退団濃厚なエンケティアよりも序列が下のようだ。
また、アトレティコやA代表での実績抜群のトーマス・パーティも、もともと前面に立ってチームを引っ張るタイプではないのに加え、今季絶不調だ。
先日のインタビューでアーセナルに来てからの自分のパフォーマンスを10点満点中4点と評していた。
これは謙虚で地に足のついた選手だという見方も出来るのだろうが、プレイを見てもわかる通り、明らかに自信を喪失してしまっているようだ。
自信喪失のアーセナル?
そして、もちろん彼と直接関係があるというわけではないだろうし、若手が多いからだと一概に言えるわけでもないが、自信喪失状態にあるのはパーティだけではなく、チーム全体にも同じことが言える。
エヴァートン戦後に、チームが抱えているのは"マインドセットの問題だ"と語ったマルティン・ウーデゴールのコメントが非常に象徴的だった。

最近のアーセナルがリードを奪うと非常に消極的になってしまう傾向にあるのはどこまで戦術的なもので、どこまでピッチ上の選手の判断なのかは不透明だが、アルテタはこの傾向に満足していないようだし、ある程度選手のメンタル面は影響を与えているのだろう。
こういった時に頼りになるのは苦境を乗り越えた経験のあるベテランに若手を鼓舞してもらうことだが、今それを頼りに出来るのは怪我から復帰したジャカ、あるいはベテランとは言えないもののセルティックでは常勝軍団の一員であり、勝者のメンタリティという意味では申し分ないティアニーくらいだろうか。
あるいは、こういった時こそ、かつてのアーセン・ヴェンゲルのように、若手たちに自分たちには力があり、実力を発揮すれば相手を圧倒できると信じさせ、自信をつけさせることが出来るような監督の言葉が必要かもしれない。
リバプール戦で無敗が途切れたのをきっかけに、一度エミレーツスタジアムを取り巻いたかに思えたポジティブな雰囲気は霧散してしまった。
ミケル・アルテタやベテラン選手たちはチームを立て直し、若手たちの士気を上げることが出来るだろうか?それとも、若きガナーズは自ら自信を取り戻し、立ち直ることが出来るだろうか?
今週末、現在16位に沈んでいるサウサンプトン相手のホーム戦がその第一歩になってくれることを願いたい。
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