今季のアーセナル躍進の3つの理由
日本代表DF冨安健洋の加入もあって、日本でも大きな注目を集めている北ロンドンの名門アーセナルだが、もし今季開幕前に昨季以前からのアーセナルファンに、『21/22シーズンの現実的な目標は?』と尋ねたとしたら恐らく多くがリーグ6位に入りヨーロッパリーグ出場権を得る事、と答えたことだろう。
それもそのはず、ここ2年連続でアーセナルはリーグ順位8位に終わっており、昨季の前半、スミスロウがすい星のように現れたチェルシー戦までは上位進出どころか中位転落も危ぶまれていたし、今季も開幕3連敗を喫するなど、非常に雲行きの怪しいスタートを切っていた。
実際に、プレミアリーグ開幕前にBBCの解説陣を対象に行われたアンケートでは、アーセナルのトップ4入りを予想した解説者はなんと20人中ゼロ人だった。
だが、ふたを開けてみればプレミアリーグで34試合を終えてアーセナルはリーグ4位とチャンピオンズリーグ出場権獲得に向けて素晴らしい位置につけている。
今季のアーセナルは今までのアーセナルとはいったい何が違うのだろうか。その躍進の理由を考察してみよう。
①大成功だった夏の補強と新戦力の台頭
これを言ってしまうと身も蓋ももないような気もするが、今季のアーセナルと今までのアーセナルの最も大きな違いは何か、と言われればまず第一にメンバーが大きく違う。
例えば、今から約1年前の試合だが、5月のプレミアリーグ、ニューカッスル戦にアーセナルは以下のような先発メンバーで臨んだ。
このメンバーと現在の主力と言える今季のアーセナルの好調を支えた11人を比較してみると半分以上が入れ替わっている。
ベジェリン、ルイス、オーバメヤン、ウィリアン、セバージョスといった選手たちは今季アーセナルに在籍すらしていないし、レノも今季は新加入のラムズデールのパフォーマンスが素晴らしいこともあり、控えGKとなっている。
夏の新加入勢で言うと、右CBは昨節こそ欠場したものの、ベン・ホワイトはアーセナル加入後ほぼ全試合で先発しており、今季最も出場分数が多い選手だ。
右サイドバック冨安も、アーセナルの右サイドバックとしてはここ10年でナンバーワンと言えるくらいの安定感を見せている。
また、昨季はコンディションが整わないことも多く、好不調の波が見られたトーマス・パーティが今季はようやく安定して先発できるようになり、チームにとって不可欠な存在となっているのも非常に大きい。
退団したキャプテンのオーバメヤンに代わって左サイドはマルティネッリとスミスロウが非常にハイレベルなスタメン争いを繰り広げているし、EURO決勝戦でPKを失敗してしまったサカは今季はメンタル面への影響も懸念されたが、PKを複数回既に成功させるなど全くその影響は感じさせないどころか昨季よりワンランク上の選手へと成長を遂げており、ペペを完全にベンチに追いやってしまった。
ウーデゴールは一年前の試合から継続してメンバー入りしているが、そもそも彼は昨季の時点ではローン移籍中の選手で、完全移籍でアーセナルに加入したのは去年の夏のことだ。
同じく夏にやってきたサンビ・ロコンガとヌノ・タヴァレスの二人もティアニーやパーティ、ジャカの離脱に伴ってプレイ機会は得ており、十分にポテンシャルは見せている。
来夏のアーセナルの最重要補強ポイントが、契約満了を迎えるラカゼットに代わる得点力のあるストライカーと、若干枚数不足となっている中盤であることは間違いないが、逆に層の薄さを除けば、主力選手のクオリティという面ではほとんど穴は見当たらないといっていいだろう。
既に現在のアーセナルの主力のほとんどがブラジルやイングランドといった各国のA代表に召集されているが、今のアーセナルの選手たちの平均年齢が非常に若いことを考えると、まだまだ現在のパフォーマンスが最高到達地点ではなく、今後の成長も大いに見込めるはずだ。