アーセナル気まぐれ選手名鑑
ヌーノ・タヴァレス
ここ2年間のアーセナルがずっと抱えていた大きな課題の一つが"左サイドバックの控え"だった。特にそれが顕著だったのが昨季で、絶対的なスタメンであるティアニーはプレミア屈指の左サイドバックだが、彼は同時に怪我がちでもあり、シーズンを通してのフル稼働は中々期待できない。
緊急的に右サイドバックのセドリックやMFのジャカがティアニーに代わって出場することもあったが、やはり不慣れなポジションでティアニーと同じようなプレイを見せることは出来ず、ティアニー不在時にチーム力が大きく下がってしまうことがアーセナルの悩みの種だった。
控えに本職を左サイドバックとする選手の獲得が急務なのは火を見るよりも明らかで、実際にこの夏のアーセナルの選手獲得第一号となったのもベンフィカからのヌーノ・タヴァレス獲得だった。
まだ21歳と非常に若く、プレミアリーグでのプレイ経験がないどころかポルトガルリーグでも先発経験はあまりない、ということで当時無名の若手にティアニーの控えが務まるのか若干の不安の声も上がったが、ふたを開けてみれば今季すでにプレミアリーグで10試合出場、うち6試合は先発と、控えどころかティアニーの座を脅かす(ティアニーはここまでプレミアリーグで8試合に先発している)勢いの快進撃が続いている。
この夏のアーセナルの獲得のうちの一番の嬉しいサプライズだったといってもいいだろう。
プロフィール
ポジション: 左サイドバック
国籍: ポルトガル(カーボベルデ系の家庭に生まれる)
年齢: 21(来年1月で22歳)
身長: 183cm
Tramsfermarkt算出による市場価値: 7m€
豆知識: 子供のころはチェロ奏者を目指していた。今も音楽が趣味でピアノとチェロは時々弾く。
スタッツで見るタヴァレス
FB refのパーセントランク(5大リーグの同ポジションの選手と比べて、どれだけのスタッツを残しているかの指標。ランク99であれば上位1%に入る、ランク95であれば上位5%に入る、という意味)で見ると目立つのは、以下のスタッツだろうか(数字は90分当たり・カッコ内の数字はパーセントランク)。
ペナルティエリアへのドリブルでの侵入: 1.22回(99)
ドリブル突破数: 2.28回(99)
ドリブルによるボール前進距離: 154ヤード(95)
相手ペナルティエリア内でのボールタッチ: 4.42回 (95)
シュート数: 2.13 (95)
サイドチェンジ: 2.89回 (93)
空中戦勝利回数: 2.13回(89)
とにかくドリブル関連のスタッツが欧州トップクラスなのは試合を観た印象通りで、これはポルトガル時代から変わっていない。90分当たりのドリブル突破数がニコラ・ペペを上回っているのは恐れ入った。
一方で、シュート数に関してはポルトガル時代は90分当たり0.6本くらいだったのがアーセナルに加入して以降むちゃくちゃ増えているので、これはもしかすると一過性のもの、というかチームのシュートが少ないため業を煮やしていたりしたのかもしれない。
また、ロングボール成功率が高く、サイドチェンジの回数が多いのも見逃せない。クロスに関しても言えるが、かなり蹴るボールの精度は高い。
獲得当初は守備に関しての懸念の声もあったが、実際には守備面でも平均以上のスタッツを残しており、今の所それが特に問題となる場面はほとんどみられていない。
成功タックル数: 1.22回 (47)
成功インターセプト数: 2.59回 (87)
被ドリブル突破数: 0.61 (81)
クリア数: 2.89回 (81)
タックル数はそこまで多くないがインターセプトがかなり多く、どちらかというとそこまで飛び込んではいかないタイプだが、地上空中両方で1対1にはかなり強く、身長もあり空中戦勝利回数と勝率はアーセナルのチームメイトと比較すると、ホワイトやガブリエルと遜色ない数字だ。
タヴァレスを語る
ここまでスタッツを紹介しておいてこんなことを言うのもなんだが、タヴァレスの一番の魅力はやはり"攻撃時にオーラがあり、見ていて非常に楽しい"ことだろう。ロマンがある、と言い換えても良い。
左サイドバックであるにもかかわらず、常に相手ゴールを隙あらば狙っており、試合終盤、チームがリードしていたとしてもカウンターのチャンスと見るや何のためらいもなく全力疾走で駆け上がっていくのはポジションは違えどラムジーを彷彿とさせるものがある。
一旦相手ボックス近くでボールを持てば(単なる想像だが)嬉々として数的不利もお構いなしでドリブル突破を仕掛けていく様子も非常にエキサイティングだ。
また、こういった選手は華麗にドリブル突破を果たしたのちにクロスをあさっての方向に打ち上げたりするタイプの選手もいるが、タヴァレスに関してはファイナルボールのクオリティも高いのも頼もしい所だ。
サイドバックとしてはかなり高身長でありながらもスプリントもチームトップクラスのスピードを誇り、かつ長距離を走るスタミナも備えている、とフィジカルで非常に恵まれているのがプレミアリーグ1年目で全く苦戦する様子を見せなかった大きな要因の一つだろう。
ポルトガル時代は守備時のポジショニングに少し難があったようだが、今の所アーセナルではそこまでそれを感じさせておらず、逆足である右足の精度も悪くない、と堅実な側面も持ち合わせている。
プライベートではチェロとピアノを楽しむ大人しい好青年でありながら、一度ピッチに立てば"本当はウイングがやりたい"感がそこはかとなく漂っているし、現状シュート数がかなり少ないアーセナルにおいて得点への意識が高い数少ない選手でもある。
もし今アーセナルファンにファイナルサードでボールを持った際に期待感が最も感じられる選手は誰か?と聞けば、サカやスミスロウと並んでタヴァレスの名前を挙げる人もいるだろうし、実際にスタッツがそれを裏付けている。
しいて言えばここからシュート精度が高まればよりオールラウンドなアタッカーになれるはずだが、それはもうすでにサイドバックではないような気はする。笑
もちろん若手に調子の波はつきものであり、今後はまだまだ分からないが、サイドでの1対1を作ることを重視する戦術を監督が用いるのであれば、ここで質的優位に立てるタヴァレスをアルテタが重用するのは理解できる。
特に大きいのは、タヴァレスが中に入ってののプレイも苦にしないことで、ニューカッスル戦でのサカへのアシストでも見せた通り、右足でのスルーパスもお手のものだ。
リバプール戦、マンチェスター・ユナイテッド戦とビッグゲームでも継続してタヴァレスが左サイドバックとして起用されており、ここまでくると若干ティアニーのことが心配になってもしまうが、ジャカとセドリックでなんとかやりくりしなくてはならなかった昨季と比べれば、トップレベルで十分に戦える左サイドバック2人のうちからどちらか1人を選ばなくてはいけない、というのは監督のアルテタにとって非常に贅沢な頭痛の種だと言えるだろう。
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